本紹介(5冊目)

最近はかなり暖かい日が増え、桜の木にも青葉が目立つようになってきました。

年がら年中眠たい日の多いタイプではありますが、ここ最近は正に「春眠暁を覚えず」の状態になってしまっています。

うとうとと休日を過ごすことが多く、中々一冊を読み通すことができていないので、今回は繰り返し読んだお気に入りをご紹介します。

 

今回取り上げるのは、伊坂幸太郎さんのデビュー作『オーデュボンの祈り』です。

全体として、伊坂幸太郎さんの作品にはどこか軽妙で浮世離れしながらも、その情景にリアリティーを持った、ある意味矛盾した印象を受けます。

おそらくその起因するところは、舞台設定の非現実さと丁寧な行動・心理描写が隣り合わせになって存在していることにあると思っています。

そうした作者の魅力をしっかり感じさせてくれるのが本作です。

 

100年の間「鎖国」していた島、人の言葉を話す案山子に、島の掟として拳銃を撃つことを許された美しい男などありえない舞台の上で、それぞれの思惑、信条、悪意、そして祈りなどがリアルな輪郭を描いていきます。

このようにカオスになりそうな世界の中でバランスを取りながら、最後は一種の爽やかさのようなすっきりとした読後感を残します。

 

夢現とつかない春の夜のお供に、どっぷりと世界観に浸かることのできる良いミステリー作品です。

名古屋営業所 稲垣